ガンマナイフ
放射線治療の方法の一つに定位手術的照射(radiosurgery: ラジオサージェリー)があります。
これは、定位脳手術(頭蓋骨をピンでフレームに固定することにより、正確に目標部位に到達する方法)の手法を応用して、1回で高線量(通常用いられる放射線治療の1回線量の10〜20倍)を頭蓋内の小さな標的に正確に照射する方法です。この手法を初めて実現した装置が、スウェーデンの脳外科医Leksellによって開発されたガンマナイフです。日本では、1990年に第1号機が東大病院に導入されました。
ガンマナイフの大きな特徴は、頭蓋内の小さな病変(通常長径3cm以下)に対して、0.5mm単位で正確に、1回で高線量を照射できることです。これは、半球状に配置された192個の「コバルト60 (Co-60)」線源からのビームが一点に集中するという装置の構造に基づいています。病変部の辺縁で線量が急激に減少し、周囲の正常部での照射線量は低くなるため、病変部にのみ高線量を照射できます。
ガンマナイフの利点
現在、脳動静脈奇形、聴神経鞘腫や髄膜腫などの良性腫瘍、転移性脳腫瘍などを中心に広く臨床応用されており、保険医療の適応となっています。
- 開頭せずに頭蓋内の疾患が治療でき、手術に伴う合併症がありません。
- 従来手術不可能あるいは困難であった脳深部の病変も容易に治療できます。
- 全身状態が悪い患者や高齢者に対しても、比較的安全に治療が可能です。
- 通常入院期間は2泊3日であり、手術に比べはるかに短くてすみます。
- 従来の放射線治療が無効または効果があまり期待できない疾患に対しても有効性が期待できます。