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当科の治療

子宮頸癌 (4日間)

子宮頸がん治療の案内



最近子宮頚がんと診断された患者さんや、そのご家族ご友人で治療法について調べていらっしゃる方に向けてのご説明です。 子宮頚がんは子宮の入り口にできるがんです。早期にはほとんど症状がないため、早期発見するには定期的な子宮頚がん検診を受ける必要があります。子宮頚がん検診で見つかるような早期がんでは、「円錐切除術」といって、膣から手術器具を入れて子宮頚部だけを切除する治療が可能です。この手術ですと広くお腹を開ける必要はありませんし、放射線治療を行なう必要もありません。将来妊娠出産をする機能も保たれます。
しかしながら、出血や痛みなどの症状が出現する段階の進行がんになってくると、膣から子宮頚部だけを切除する手術では済まなくなります。というのも、進行がんでは子宮だけではなく、周囲のリンパ節にがん細胞が転移している可能性が高くなるからです。お腹のリンパ節まで含めて治療をするとなると、「手術でお腹のリンパ節を切除する」もしくは「お腹全体に放射線を当てる」というどちらか2つの治療が必要になってきます。
ここでお伝えしたいことは、子宮頚がんにおいては「手術でお腹のリンパ節を切除する」よりも「お腹全体に放射線を当てる」方がしっかり治る治療法だということです。一般的なイメージですと、がんは外科手術で切るのが一番という印象をお持ちの方が多いかも知れませんが、子宮頚がんにおいてはそれは間違いなのです。1990年代後半海外で、子宮頚がん患者さんに、手術をするのか放射線治療をするのかを無作為に割り付け、どちらがより治りやすかったかを調べた研究が行なわれました。その結果、手術も放射線治療もどちらも治る可能性に違いがなかったということがLancet誌350号に報告されました。しかもこの調査では、手術を受けた後に再発したり、手術でがんが取り切れなかった患者さんには放射線治療が追加で行なわれていました。つまり、手術は放射線治療のサポートを受けたことではじめて、最初から放射線治療を行なうのと同等の治療効果が得られたのです。それならば最初から手術は不要で、放射線治療を行なえば良かったと考えるのが合理的です。さらに1999年には、放射線に抗がん剤を加えることで放射線治療単独よりも治りが良かったという研究結果も報告されました(New England Journal of Medicine誌340号)。つまり、治りやすさでいうと「手術(±放射線治療)≒放射線治療のみ<放射線+抗がん剤」と言うことができます。
当院では子宮頚部を切除するのみでは済まない進行がんの方に関しては、放射線治療と、加えて投与可能な方については抗がん剤も併せて治療することをお勧めしています。


*1 Landoni et al. Randomised study of radical surgery versus radiotherapy for stage Ib-IIa cervical cancer. Lancet 1997;350:535-540

子宮頸がんの根治治療



根治治療としての放射線治療の歴史は古く、1930年代には既に現在行われている方法の基となる放射線照射法が確立されていました。この時代よりすでに、根治治療としての放射線治療は、外科手術に匹敵する治療成績を上げることができることが知られていました。

1997年のイタリアのLandoniらの報告(*1)によると、Ib期(88%)とIIa期(12%)の子宮頸癌症例343人をいわゆる「くじ引き」するようにして手術群(172例)と放射線治療単独群(171例)に割り当てて治療しました。多く(83%)が扁平上皮癌症例でしたが、14%の腺癌症例も含まれていました。手術群の64%の症例が術後に何かしらの補助療法を受けています。結果、全生存率・無病生存率ともに両治療群で同等の結果でした(右図;*1より引用)。


*1 Landoni et al. Randomised study of radical surgery versus radiotherapy for stage Ib-IIa cervical cancer. Lancet 1997;350:535-540


当科での治療方法



根治的放射線治療は、領域リンパ節を含めた全骨盤照射と、密封小線源を用いた腔内照射を併用して行います。ごく早期のもの(Ia以下)に対する根治照射では、腔内照射単独で治療を行います。

局所進行子宮頸癌(大きいIbとIIa 、およびIIb以上)に対する根治治療としては、プラチナ製剤ベースの化学放射線併用療法が標準治療、すなわち最強の治療であることが新たなコンセンサスとなっています。

当科では年間約30症例のペースで子宮頸癌に対する根治的化学放射線療法を施行しています。

当科では外来で投与可能で、日本で開発された副作用の少ないプラチナ製剤である「ネダプラチン」を使用しています。化学療法ならびに放射線療法の全てを外来で施行することも可能です。当科では、化学療法は3週空けて計3回投与します。外からの放射線は計28回、中からの腔内照射(いわゆるRALS)は病期や原発腫瘍の大きさによって3-5回、静脈麻酔下に施行します。放射線治療期間が7週間以内に終わるようにしています。

早期のものでは、手術にしても、放射線治療にしても、良好な治療成績が上げられています。0期、もしくはIa期の一部のものは円錐切除もしくはその類の治療にて根治可能です。妊孕性の温存を希望されない場合は、単純子宮全摘を行うことも有りえます。それよりも進行したものでは、放射線治療、手術のそれぞれの長所、短所をよく吟味し、患者の希望に添う治療法が選択されるべきです。 IIb期に対して、広範子宮全摘出術+その後放射線治療を追加するといった治療法を選択しているのは日本だけです。欧米では、術後照射による治療後数年にわたる下肢のむくみや治療中に起こりうる骨盤内リンパ浮腫の悪化を懸念して、手術施行前から術後補助療法が必要であると判明しているIIb期に対して手術はせず、同等以上の成績である根治的放射線療法(±化学療法)が選択されてます。


子宮頸癌に対する根治的放射線治療に伴う副作用



A. 外照射による急性副作用


ほとんどの患者は全骨盤照射中に少なくともある程度の下痢を経験します。下痢は通常内服薬と食事形態の変更により十分コントロールされます。

頻度は少ないですが、膀胱または尿道の刺激症状を訴える患者様もいます。

広範な膣浸潤の治療のために外陰部が照射野に含まれる場合、ひどい皮膚紅斑やさらには湿性落屑も生じえます。


B. 腔内照射による急性副作用


腔内照射での致命的で命を脅かすような副作用は稀です。腔内照射による、それほど重篤でない副作用には子宮穿孔(2-5%)や腟裂傷(1%未満)があります。これらの副作用はともに60歳を越える女性でより起こりやすいと言われています。およそ10人に1人の頻度で、原因不明の発熱を訴えます。


C. 晩期副作用


放射線治療による晩期副作用の殆どは直腸、膀胱または小腸に起こります。殆どの重篤な消化管副作用は治療後3年以内に発生しますが、数十年経過した後に発生する重篤な副作用もあります。主要な尿路系副作用の発生までの平均期間は、腸管副作用の発生期間と比して幾分長い傾向があります。最もよく認められる重篤な晩期副作用は、膀胱出血(2-5%)または直腸出血(1%未満)です。消化管瘻または尿路系瘻孔を発症するリスクは5年で2%未満であり、照射後に子宮全摘を施行された患者様や、治療前に腹部の手術歴がある患者様でリスクが高いと言われています。

小腸閉塞のリスクは患者様の特徴や治療法と強く相関します。放射線治療前に腹部の手術歴がある患者様ではリスクが3-4倍に増加すると報告されています。痩せすぎの患者様、骨盤感染の既往のある患者様、喫煙歴のある患者様でも小腸閉塞のリスクは高いと言われています。1日1箱以上喫煙する患者様では小腸閉塞のリスクが6倍に増加します(12% vs. 非喫煙者2%)。

軽度から中等度の膣部潰瘍または壊死は患者様の5-10%に発生します。この副作用は通常放射線治療終了後12ヶ月以内に発生します。瘻孔を形成することはまれです。適切に局所ケアすることで多くは1-6ヶ月以内に治癒します。実際に膣短縮により性交不全となるかに関しては、ほとんど調査されていません。重篤な膣短縮は、性行動に乏しい閉経後の患者様や診察時により進行した病変を持つ患者でよく認められます。
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